雑誌Clubmanで見てから虜になってしまったスポーツスター1200を、新車で購入しました。当時は円高で、乗り出しで90万程度だったと思います。

このバイクに乗りたくて17歳で限定解除しましたが、当時は免許センターで一発試験のみでした。それはもう「軍隊ですか?」なノリで、もはや運転技術云々ではなく、ひたすらイジメに近いものがあったと思います。

「よっしゃ、今回は完璧だ!」と思った10回目、試験管室に入り、試験官の話の感触からも絶対に受かったものと思っていましたが、結果は不合格。もうそれはそれはひどく落ち込みましたが、ここでめげる訳にはいきません。なぜなら、

バイクが納車済みだから

そして運命の11回目。

前回の気持ちも引きずっていて、結果には自信がありませんでした。試験官の話からも「あぁ、今回も落ちたな」と思ってしまうような内容だったので諦め半ばに結果の電光掲示板を見ると、

「あるじゃないか!俺の番号!!」

思わず三度見してしまいました。その時の嬉しさと喜びったら、もう。

一緒に免許センターに通っていた仲間たちに報告し、当時のお約束で、受かった人が他の人にジュースを奢るという「合格ジュース」を皆に渡しました。

その後は飛ぶように家に戻り(実際に飛んでいたかも)、待ちに待ったハーレーに跨がり、エンジンをかけ、ズダダダダと走りました。

「おぉ、これが1200ccのトルクか!」

今までの中型のトルクとは比べ物にならない大きなトルクに、とても感動しました。そして新車特有のエンジンの焼ける匂い、もうそれだけでご飯3杯はいけました。

限定解除当日に写真を撮ってくれました
限定解除当日に写真を撮ってくれました

カスタムした点は、ノーマルだと容量の小さいガソリンタンクをマスタングタンクに交換。プラグコードを変え、シートはコルビン(CORBIN)製、マフラーはスーパートラップの1本出しを付けました。ウインカーは小ぶりのものへ変更。本当はダートラ仕様にしたかったのですが、もちろんそんなお金はなかったので、ここまでです。

XLH1200 Sportster

初めての事故

それはある日の事。

国道を走行中、渋滞していたので左からすり抜けをして進んでいた所、突然車の切れ間から右折をしてきた対向車と衝突してしまいました。

そこは工場の出入口で、渋滞でも出入りができるように車間を開けていた車に気づかなかったためです。

対向車の左前部に自分が突っ込む形でぶつかり、ボンネットの上を飛び越えるように体が飛んでいきました。その時は時間がスローモーションのようにゆっくりとなり、運転手は目をつぶって下を向いていたのをハッキリと覚えています。

その後は、着地の直前からの記憶がありません。

周りが騒がしい音に気がつくと、自分が事故を起こした事に気づきました。体が動くかどうかを確認したのですが、力が入りませんでした。運転手が助けに来ないので、思わず大声で怒鳴ってしまいました。今考えると、きっと恐怖で体が固まってしまったのだと思います。

体が動くようになったので、自分でその工場の入口まで歩き、守衛さんに救急車を呼んでもらい、親にも電話をしました。(当時は携帯などないので、公衆電話です)

すぐに救急車が到着すると、担架に乗せられ車内へ運ばれました。その時、ジーンズの脛の部分が縦に裂けているのに気づきました。

「ちょっと見てみるね」

と救急隊員が言い、その部分を見てみると、脛が縦にパックリと割れていて骨が見えていました。そしてその傷口には、メタリック塗料がキラキラと輝いていました。

サイレンを鳴らす車内から窓の外を眺めていると、とても不思議な感じで、自分が事故で運ばれているという感じが実感できませんでした。

すぐに病院へ到着し先生に傷を見てもらった所、

「骨折はしてないようだね。この塗料がまずいから、ピンセットで取っていくよ?」

という事で、1つずつ丁寧に傷口に入った塗料やゴミなどを取ってもらいました。痛みは全くありませんでした。

全てを取り除いたあと、縫合して治療は終わりました。入院するかと思いまいしたが「帰っていいよ」という事だったので、親に迎えにきてもらい帰宅しました。親にはさぞ心配をかけたと思います。

傷跡は残りましたが、後遺症はなかったのは不幸中の幸いかと思います。そしてこれに懲りて、すり抜けはしないようになりました。またバイクはこの事故で一発廃車になってしまいましたが、今思えば自分の身代わりになってくれたのだろうと思っています。

皆さんもくれぐれもバイクの運転には、お気をつけ下さい。

ちなみにバイクは全損扱いで、相手方の保険で新車への乗り換えとなりました。

2代目となったスポーツスター1200。ナンバーも変わりました。右はコブラと一緒に。

四国へ

かつてCB750に乗っていた父に会いに、四国へ旅立ちました。息子も立派にバイク乗りになったと報告をしに行きます。

当時はナビなんて便利なものはないので、頼りはマップルと地元の人と、最後はカンです。東北道から首都高に乗り、何とか東名に乗ることができました。そこからはひたすら高速を進んでいきます。

道中、「日東」や「養老」という地名がとても印象的でした。初めて見る地名に、旅をしている実感が湧いてきました。

何とか神戸へ入りフェリー乗り場へ向かいますが、これまた乗り場が全然見つかりません。トラックがたくさん走っている工業団地のような場所を、ひたすらグルグルと回った記憶があります。

何とかフェリー乗り場へ着き、高松行きのフェリーへ乗船。子供の頃にたくさん乗ったので、とても懐かしい感じがしました。

無事高松へ到着し、目的の場所へ向かいます。うっすらと覚えている街並みも随分と様変わりし、あやふやな記憶を頼りに走り出しました。

そして到着、父との再会。久しぶりの父は少し老けた感じがしましたが、とても元気そうで、自分よりもバイクに興味津々のようでした(笑)。当時父が乗っていたCB750(もちろんもう不動車)にも再開し、色々と懐かしい思いに浸りました。

Honda CB750
Honda CB750

色々と積もり積もった話をしましたが、その日は旅の疲れもあって早めに就寝。翌朝は、広めの駐車場で「乗っていいか?」ときたもので、こちらも待ってましたとばかりに思う存分スポーツスターに乗ってもらいました。いったい何年のブランクだろうと思いましたが、全然普通にバイクに乗る父の姿に「さすがは我が父」などと誇らしく思ってみたりしました。

そういえば自分が幼稚園の頃、父のCB750のタンクとシートの間に乗せられ走った事を、その時ふと思い出しました。

楽しい時間はあっという間で、すぐに帰る日が訪れました。帰りのフェリー乗り場にたくさんの人が来てくれ、見送ってくれました。

そして帰り道。

東名高速を台風と一緒に帰ってくるという、生と死の狭間を行ったり来たりするような状況で、何とか生きて帰る事ができました。命からがらたどり着いた足柄SAで入った温泉は、未だに人生で一番の風呂です。全身びしょ濡れの姿でも受け入れてくれた受付の方、本当に感謝します。

往復約2,000kmの旅を終え、また1つ大人になった気がする18の夏でした。

北海道へ(函館・長万部・札幌・伊達・苫小牧)

バイク乗りとして一度は行きたい場所といえば、北海道。
東北道を終点の青森までひた走り、フェリーで函館へ。スポーツスターの振動は大きい方でしたが、何せ乗っていて楽しいのでグングン進んでしまいました。

自分はいつも無計画で旅立ってしまうので、着いた先の函館でどうするか何も決めてなかったのですが、フェリーの船内で知り合いになった方に「安くて良い宿があるよ。自分も今日はそこに泊まるけど、どうですか?」との事だったので、着いていく事に。宿で空きを聞くと大丈夫との事だったので、そこで一泊しました。

翌日、その方と途中まで方角が一緒だったので、大沼公園まで一緒に走る事にしました。そしてその方とはそこで別れ、伊達市へ向かいます。

そこには友人の知り合いのハーレー乗りがいて、ありがたい事に泊まる部屋を提供してくれたので、そこをベースに北海道を回る事にしました。美味しいジンギスカンをご馳走になり、その説は本当にお世話になりました。

翌日、国道230号線の北海道ならではの雄大な景色を満喫しながら、ルスツ高原を経て札幌へ北上しました。

札幌市内にて
札幌市内にて

札幌市内へ着くと有名な時計台が見えましたが、あまりの小ささにビックリです。そして適当にバイクを停めて、商店街を散策しながら美味しそうな食道を探しました。

「海鮮丼500円!!」

という看板を見つけ入ってみたところ、ボリューム満点の美味しい海鮮丼を食べる事ができました。

さて北海道のツーリングといえばホクレンの旗。すれ違うバイクの荷物にたくさんの旗が挟んであるのを見かけ、「あれは何だろう?」と思っていた所、ホクレンで給油すると貰えるという事を初めて知りました。
中にはバイクの後部が旗だらけの強者もいて、それだけ北海道を走っているのだなぁと思いながら、旅バイクとのすれ違いざまにヤエーをしたりしてました。(当時はまだヤエーという言葉はなかったですね)

お世話になった伊達の一家とお別れをし、帰りのフェリー乗り場である苫小牧へ向かいます。そしてフェリー乗り場へ着くと、鬼のような行列ができていました。

「何があったんだろう?」と、チケット売り場へ向かい係の人に状況を尋ねると、「天候不良のため船が数便欠航になったので、次の便のキャンセル待ちが必要です」との事でした。

「参ったな、明日から仕事なのに」と思いつつ、たくさんのライダーが諦めて、フェリー乗り場の空いている芝生にテントを張っていました。仕方がないので、自分もテントを出そうとしたその時、一人のライダーが声をかけてきました。

「ツーリング仲間が一人、まだ北海道に残ると言ったから、フェリーのチケットが1枚余ってるんですけど、どうですか?」

もうその時はその人が神様に見えましたよ。もちろんありがたく甘えさせて頂き、何とかフェリーに乗船する事ができました。船の中ではその人の仲間たち(というか、他の人もここで知り合ったばかりだったようです)とバイク談義に花を咲かせ、船を降りた後も帰る方角が同じだったので、東北道を一緒に走りました。

その道中、東北道から偶然にも花火大会の花火が見えた事が、まるで「お帰りなさい」と言っているようで、とても感動しました。

長旅から帰ってきた直後、友人の勤めるガソリンスタンドにて

こうして無事に家に帰ってきて、道中たくさんの貴重な経験ができたことで、また1つグッと成長した気がした18の夏でした。

スペック

タイプグレード名Harley-Davidson XLH Sportster 1200
車両重量226kg
乗車定員2名
原動機種類4ストローク
気筒数2
シリンダ配列V型
冷却方式空冷
排気量1198cc
カム・バルブ駆動方式OHV
内径(シリンダーボア)88.8mm
行程(ピストンストローク)96.8mm
圧縮比9.0:1
最高出力49HP
最高出力回転数5200rpm
最大トルク8.6kgf-m
最大トルク回転数3500rpm
燃料供給方式キャブレター
燃料タンク容量8.5L
エンジン始動方式セルフスターター式
変速機形式リターン式・5段変速
変速機・操作方式フットシフト
動力伝達方式ベルト
ブレーキ形式(前)油圧式ディスク
ブレーキ形式(後)油圧式ディスク
懸架方式(前)テレスコピックフォーク
懸架方式(後)スイングアーム式
タイヤ(前)100/90-19
タイヤ(後)130/90-16